2012.02.05

日本のモノヅクリ 坂本デニム様

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広島県福山市にある坂本デニム様(http://sakamoto-d.co.jp/)を訪ねました。デニムの染色を専門とされている創業120年の企業様です。坂本量一社長に坂本デニムやモノヅクリに対する想いをお聞きしました。

 


デニムの生産量はピーク時の1/3。10年前の半分。リーマンからさらに3~4割減ったという厳しい状況の中、どのようにして日本でしか出来ないモノヅクリを究めていくのか、そのヒントを伺いました。

 


元々昭和50年代、なぜ日本のモノヅクリが世界一と評されるようになったか。

 


それは、熱心なやり取り、誠実さ、日常的に改善していたから。何かを意識してなったわけではない。日本人は社長以下一丸となって創意工夫していた、と。欧米では工場で働いている人のモチベーションや創意工夫という文化がなかった。その理由は詳述しませんが、日本は単一民族であり、意思疎通がうまかった点が奏功したと思う。

 


そして、日本が欧米に追いついたわけです。一緒のレベルにはなった。さて、その後。その後が凄かったのだと教えていただきました。

 


付加価値と差別化。ここでジャパンブルーへの帰結があった。日本人のDNA、日本人として藍色が好きという民族性。それは糸の開発と色の研究という形になって表れる。機械では出せないと思われていた手作りの温もりを感じさせる生地をどう作るのか、天然染色の藍色にどこまで近付くことが出来るのか。その飽くなき追究が他の追随を許さないところになっていたのだと。

 


大手のデニムメーカーさんはやはり量販ライン(ある程度安い価格である程度の品質)を求められるので、そこではなく、本当に分かってくれる対象をターゲットとしたモノヅクリをしていらっしゃる。人件費の高騰や円高など外的要因が大きくなり、日本のモノヅクリが厳しくなっている中でも戦えるモノヅクリ。

 


どこの業界でも同じような問題を抱えているのではないかと思う。そして選択肢としては、高付加価値、低コストを推し進めることになる。低コスト化を推進するために一番良くある選択肢は日本から出るという選択。けれどもこれでは【企業は残っても国が廃れる】そうではない道。日本でやるには?日々の改善は当たり前。

 


コストを下げるのも科学的根拠を持って取り組まなければならないと教えていただいた。坂本デニム様では、海外移転やリストラではなく、薬剤や蒸気などのコストを下げ、同時に省エネへ舵を切られたのである。

 


しかも少しの改善ではない。やはり2桁数字が変わることを追い求めないといけない、と。染色では重油を大量に使う。従来では温めながらしていた工程を常温で出来ないか?と考え、試行錯誤する。また、薬剤を使用せずに水だけで洗浄することはできないか?と考え、試行錯誤する。

 


今の量販ではないメーカーが求めるもの。デザイナーが求めるもの。それは再生可能な世界の実現。環境配慮。その想いに応える形で試行錯誤は続けられて、今ではさすが日本のモノヅクリと言われるところまでになっていらっしゃる。

 


もう1段階のブレークスルー。コストを下げて、環境配慮もする。日本はさすがだな。と思われたい。

 


どの業界でもそうだけど、業界の慣例や常識的にムリというお話によく出くわす。ただうまくいっているところはその壁を突破するために努力を続けている企業なんだと思う。『いやー、それはこの業界ではムリだね。常識的に考えてもそれはダメだ。』という言葉が出たら、そこが狙い目である。どの企業もそう思っているのであれば、ブレークスルーした時の差別化は大きなものになる。

 


中国やバングラデシュのモノヅクリも見てきたけど、やはりこのレベルのところにまでもっていくのは難しいと思う。現状ではより安く、品質を高める、というレベルであり、独創的な工夫や視点によって、付加価値を付けようと企業一丸となってやっているところはあまり聞かないし、そのようなニーズも切羽詰った状況もない。

 


環境配慮というのも、オーガニックコットンを使っているだけというのでもダメ。それを染めるためにどれだけの重油を使っているのか、洗剤を使っているのか。そこをも配慮していかないと。また、坂本デニム様では社員食堂で出たゴミや家庭で出たゴミは生ゴミ処理機で肥料にされている。それを綿畑に撒いていらっしゃるのである。しかもしれが当たり前。環境配慮だからやっているのではなく、当たり前のこととして取り組まれている。私たちがお邪魔した際にもみなさま当たり前のように全員席から立ってご挨拶いただいた。

 


やはりそのような企業文化があってのモノヅクリだと思う。

 


本気の人たちが現場バリバリでモノヅクリに取り組む姿勢、業界の常識や慣例に囚われないチャレンジ精神、それを良しとし社員一丸となっての企業文化の体現。

 


このような機会をいただいた坂本社長に感謝。

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